アミノ酸スコアの数値で注意したい第一制限アミノ酸とは?
アミノ酸スコアの数値で注意したい第一制限アミノ酸とは?
アミノ酸を効率的に摂取する方法
アミノ酸スコアが100のタンパク質は、良質な筋肉を作るために役立つと言われています。しかし、成分量が水準値より少ない「制限アミノ酸」が1つでも含まれていると、食品全体のアミノ酸スコアが下がってしまうのをご存知でしょうか。なかでも「第一制限アミノ酸」を把握することで、栄養バランスの優れた食事づくりに活かせます。この記事では第一制限アミノ酸とアミノ酸スコアの関係と、バランス良くアミノ酸を摂取するメリットを紹介します。
第一制限アミノ酸とは?

食品に含まれるタンパク質のバランスをもとに評価した数値を、アミノ酸スコアと言います。このスコアが100に満たないアミノ酸が「制限アミノ酸」です。ここからはアミノ酸スコアと第一制限アミノ酸について、詳しく解説します。
第一制限アミノ酸とアミノ酸スコアの関係
アミノ酸スコアはタンパク質の評価基準の一つです。アミノ酸スコアが100に満たないタンパク質を構成するアミノ酸の中でも、数値がもっとも低いものを「第一制限アミノ酸」といいます。2番目に数値が低いアミノ酸を「第二制限アミノ酸」というように、アミノ酸の含有量ごとに順番に呼ばれます。
なぜ第一制限アミノ酸が注目されるのかというと、アミノ酸がどれだけ吸収されるかどうかは第一制限アミノ酸を基準に決まるためです。体内に入ったタンパク質は体内でアミノ酸に分解されます。必須アミノ酸はほかのアミノ酸とバランスを保ちながら体内で利用されるという特徴を持つため、タンパク質に含まれるアミノ酸のなかでもっとも数値が低い第一制限アミノ酸が基準となるのです。たとえば米に含まれるタンパク質の場合、バリン、ロイシン、イソロイシンなどBCAAの数値は100を大きく超えています。しかし、第一制限アミノ酸であるトリプトファンの数値が低いので、米のアミノ酸スコアは72となっています。
アミノ酸スコアの計算方法
食品に含まれるアミノ酸スコアは次の式で計算できると言われています。
食品タンパク質中の第1制限アミノ酸含量(mg/gN)アミノ酸スコア=アミノ酸評定パターン該当アミノ酸含量(mg/gN)×100
第一制限アミノ酸は次の式で計算できます。
食品タンパク質の第一制限アミノ酸含有量(mg/gN)÷アミノ酸評定パターン該当アミノ酸含量(mg/gN)×100
アミノ酸スコアは最大値が100と設定されているため、タンパク質に含まれるすべてのアミノ酸の数値が100を超えたとしても、アミノ酸スコアは100となります。
制限アミノ酸はさまざまな食品から摂取しよう
アミノ酸スコアが100に満たない場合、不足しているアミノ酸があるということです。そのためアミノ酸スコアを高くするためには、さまざまなアミノ酸を摂取して、制限アミノ酸の数値を高めるのがおすすめです。ではなぜ制限アミノ酸を気にするべきなのか、その理由を解説します。
アミノ酸スコア100の食品にも数値が低いアミノ酸は存在する
アミノ酸スコアが100の食品は完璧だと思われがちですが、アミノ酸の含有量にはバラツキがあります。飛び抜けてスコアの高いアミノ酸が含まれていたとしても、体内の吸収量はスコアの低いアミノ酸の数値にあわせて決まるので、期待通りの働きを発揮しないかもしれません。
たとえばアミノ酸スコアが100の食品としてよく耳にする卵(鶏卵)に含まれるタンパク質のなかで、もっとも数値が低いアミノ酸はトリプトファンです。この場合、体内でアミノ酸が利用されるときはトリプトファンの数値にあわせて利用されます。そのため、体内で利用されるアミノ酸の量を増やしたいときはトリプトファンを補うことで利用されるアミノ酸を増やせると考えられます。
さまざまなタンパク質を摂取するとアミノ酸が吸収されやすくなる
アミノ酸スコアが100の食品とあわせて、数値が低いアミノ酸をほかの食品で補ってあげると、アミノ酸が平均化されて吸収されやすくなります。しかし、食品の制限アミノ酸をすべて把握するのは難しいので、さまざまな種類のタンパク質を摂取するのがおすすめです。
たとえばアミノ酸スコアが100の食品である卵(鶏卵)は動物性タンパク質なので、豆腐などの植物性タンパク質も摂取するように心がけたり、動物性タンパク質のなかでも肉、魚、乳製品などさまざまな種類のタンパク質を摂取したりしてみてください。
アミノ酸スコア100の食品とは
アミノ酸はバランス良く摂取するのが大切ですが、アミノ酸スコアが100の食品は、含まれるアミノ酸すべての数値が100を超えているため、体内でバランス良くアミノ酸を利用できます。ではアミノ酸スコアが100の食品にはどんなものがあるのか、アミノ酸スコア100の食品以外で摂取したい食品もあわせて紹介します。
アミノ酸スコア100の食品で摂取したい食品
アミノ酸スコアが100の食品は次のようなものが挙げられます。
- 牛乳
- 牛肉
- 鶏肉
- 豚肉
- アジ
- いわし
- さけ
- マグロ
たとえば卵(鶏卵)に含まれるアミノ酸でもっとも数値が低いトリプトファンを補うなら、チーズや納豆などの発酵食品を取り入れるのがおすすめです。
アミノ酸スコア100の食品以外にも摂取したい食品
アミノ酸スコア100の食品以外にも、プロセスチーズや大豆はアミノ酸スコアが高い食品と言われています。また、アミノ酸スコアが飛び抜けて高いわけではない食品のなかでも、食事の栄養バランスを保つために役立つものがあります。たとえば白米はエネルギーになりますし、トマトはビタミンが豊富です。
バランス良くアミノ酸を摂取するのは大切ですが、タンパク質ばかりを摂取していると脂質やカロリーが理想的な摂取量をオーバーしてしまう可能性があります。カロリーや脂質を抑えて不足するタンパク質やアミノ酸を摂取するなら、プロテインやBCAAを取り入れるのも一つの方法です。
アミノ酸スコアの注意点

良質な筋肉を作るために、できるだけアミノ酸スコアが高い食品を取り入れる方も多いでしょう。しかし、アミノ酸スコアにこだわると調理の手間が増えたり、アミノ酸のバランスが偏ったりすることがあるので気をつけてください。ここからは、アミノ酸スコアの注意点を2つ紹介します。
アミノ酸スコアは計算しにくい
食品のアミノ酸スコアはあくまで素材単体としての数値でしかないため、料理に含まれるアミノ酸スコアを計算するのは難しいと言えます。そのため食品ごとのアミノ酸はあくまで目安と考え、さまざまな食品からタンパク質を摂取する習慣をつけるのがおすすめです。
タンパク質の摂取量が偏らないように気をつける
アミノ酸スコアを考慮したり、アミノ酸のバランスを整えるために不足するタンパク質を摂取したりすると、1日に必要なたんぱく質量をオーバーしてしまう可能性があるほか、カロリーや脂質オーバーになるリスクもあります。そのため、アミノ酸のバランスを良くして吸収を高めたいなら、食品よりも低カロリーで効率的に栄養素を摂取できるサプリやパウダー、ドリンクで不足しがちなアミノ酸を補給するのも一つの方法です。
アミノ酸スコアはあくまで目安!バランスを意識しよう
アミノ酸スコア100の食品は良質な筋肉づくりに役立つと言われています。しかし、アミノ酸スコア100の食品にも数値が低いアミノ酸が存在するため、さまざまな種類のタンパク質をバランス良く摂取すると効率良くアミノ酸を吸収できるでしょう。また、健康な体を保つにはアミノ酸だけでなく、ほかの栄養素もバランス良く摂取するのが大切です。タンパク質とあわせて糖質やビタミンも意識するなど、バランスが偏らないように気をつけてみてください。
本記事の監修者

医学博士・永田孝行
一般社団法人日本ダイエットスペシャリスト協会理事長
健康運動指導士
生活習慣病予防と改善の為の食事療法としてGI値に着目し、低インシュリンダイエットを提唱。
主な活動として、各健康保険組合・企業・各都道府県での講演活動、雑誌の指導・監修、テレビ、ラジオ、新聞などの取材も多数受けている。
一般社団法人日本ダイエットスペシャリスト協会
公式ホームページ:https://jdsa.co.jp/